SHIRAHA CPA Profession Office
白羽公認会計士事務所

脱炭素への取組み

日銀が金融政策決定会合で気候変動対応オペを決定

日銀は9月21日の金融政策決定会合で気候変動対応を支援するための資金供給オペレーション(気候変動対応オペ)について、その詳細を決定しました。他国の中央銀行が脱炭素に向けた対応を推進するなかでに日銀も脱炭素を支援する新たな資金供給に係る政策を打ち出すことで、足並みを揃えたといえます。
気候変動対応投融資に関する新たな資金供給の仕組みについては、金融機関に対しTCFDによる開示を求めることで規律を確保する方向と考えられます。資金供給対象となる投融資はグリーンローン/ボンド、サステナビリティ・ローン/ボンドのうち気候変動に紐づくもの、トランジション・ファイナンスが対象になる方向です。
ここでもTCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示が求められる方向であり、金融機関から投融資を受ける企業もその対応を求められることが予想され、早急な準備が求められます。
なお、金融庁は日本銀行と連携し、3メガバンク・大手損保3グループを対象に、NGFS(Network for Greening the Financial System:気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)シナリオを共通シナリオとするシナリオ分析のパイロットエクササイズを実施する予定です。併せて、投融資先の支援と気候変動リスク管理に関し、まずは預金取扱金融機関・保険会社に必要な態勢に関するモニタリング上の着眼点を明確化するとしています。NGFSは気候変動対策の開始時期や導入プロセス、技術革新のスピード等に応じた6つのシナリオを提示しています。

カーボンニュートラル

2020年10月「わが国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを総理大臣が宣言しました。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて国、地域、民間のあらゆるレベルで様々な分野や角度から検討が行われています。
環境省が提供する「脱炭素ポータル」を参考されたい。
脱炭素ポータル|環境省 (env.go.jp)

ESG課題と脱炭素

ESG課題の中で共通の重要な課題として気候変動に関する課題があります。この課題に対しGHG排出量の削減に向けた取り組みがされています。パリ協定以降、この取り組みが加速し、各国において削減に向けた目標を設定しており、わが国においても2050年カーボンニュートラル宣言として目標を表明しています。とりわけGHGを多く排出するエネルギー産業への影響は甚大であり、ビジネス構造の変革が求められることになります。それ以外の産業においても、エネルギーをインフラとして利用するビジネスの多くに影響を及ぼすことは確実であり、各企業における脱炭素に向けた取り組みがビジネスの持続可能性に大きな影響を及ぼすことは必然となります。

カーボンフットプリント(CFP)

カーボンフットプリント(Carbone Footprint of Products)は「商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通して排出される温室効果ガスの排出量をCO2に換算して、商品やサービスに分かりやすく表示する仕組み」をいいます。例えばペットボトル飲料を生産・流通・販売及び処分・リサイクルする過程において排出するGHGの合計排出量を表示することをいいます。
わが国では経済産業省などが主導し社団法人産業環境管理協会が「カーボンフットプリントコミュニケーションプログラム」としてカーボンフットプリント製品種別基準に基づき算定したCFPの検証・登録などの手続きをしてCFPマークが発行されています。
CFPの取り組みはEUをはじめ、北米、アジアなど世界的にも広がっています。各国でCFPの算定方法やラベル(表示)のガイドラインが策定されてきており、その整合性が求められます。

<取り組みの普及に向けた課題>
CO2排出量と製品価格の関連性を確認するのが困難
‐販売価格に対する排出原単位を用いて算定することが考えられているが、CO2削減努力が販売価格に反映されるかが課題と考えます。
CFPが普及するかのカギは、
‐ 低炭素価値をいかに商品価格に反映できるか
‐ 低炭素商品が市場において差別化要因となるか
‐ CFPで企業ブランドの向上に繋がり、業績が向上する要因となるか
と考えます。

Scope3

Scope3はScope1とScope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)です。Scope3は15カテゴリと環境省・経産省の基本ガイドライン独自カテゴリである「その他」に分類されます。
サプライチェーン排出量は原料調達・製造・物流・販売・廃棄等のサプライチェーンから発生する排出量をいい、Scope1、Scope2、及びScope3により構成されています。Scope3はサプライチェーン上の活動が重複してカウントされることがあります。Scope3はサプライチェーンにおける企業の活動による排出量を評価することで間接的に排出量削減の取組みに貢献します。
<Scope3削減量開示の課題>
Scope3に関する企業による開示は任意であり、またその把握が困難なこともあり、これまではその数値について開示する企業は限定的でした。サプライチェーンにおけるScope3の重要性が認識され、開示の動きが活発化する気配もあります。SEC(米国証券取引委員会)は気候関連情報の開示に関するルール案でScope3排出量の開示について重要な場合、または削減目標に含まれる場合には開示するよう提案しています。

Scope3の実態は、

GPIFが投資する株式・債券のポートフォリオ全体の排出量をセクター別・スコープ別に分析しています。GPIFが公表した2021年度ESG活動報告によれば、「資本財・サービス」「一般消費財・サービス」「エネルギー」の産業は全排出量に占めるScope3の割合が高くなっています。この3つの産業における全排出量に占めるScope3の割合は、79%、74%、44%となっています。
一方、Scope3の絶対量は大きいものの、企業の想定負担率を踏まえると必ずしも大きなものとは言えません。
いずれにしても、Scope3の排出量については間接的な企業活動によるものであり、社会全体での取組みが必要な領域と考えられます。