SHIRAHA CPA Profession Office
白羽公認会計士事務所

ひとこと

サステナ開示に、ひとこと

企業によるサステナビリティ情報が開示され、それぞれの取組みが示されています。地球温暖化による異常気象もあり、地球課題として気候変動関連課題への取組みが共通の課題として開示されていますが、ひとつの企業グループとしての捉え方は様々であり、その取組みも様々です。
サステナ開示は企業の存在意義と価値観を反映し、それぞれの役割りに自覚と責任をもって取組んでいる内容を開示する必要があるののでは、と感じます。制度開示は政策的な取組みを加速させるためには有効ですが、果たしてサステナ活動はこのような取組みなのでしょうか。むしろ、それぞれの存在意義に照らして持続可能な取り組みとすることで、地球規模の課題の解決に向けた活動を促すものではないかと思います。サステナ開示は政策を推進するためではなく、それぞれの取組みを共有し、自らの立ち位置を確認しながら役割を果たすために開示する、という意義をみいだすことが必要ではと考えます。
ISSB(国際サステナビリティ基準委員会)がIFRSサステナビリティ開示基準を策定し、我が国でもサステナビリティ情報の制度開示に反映されてきています。基準の制定は情報の利用者側からは比較可能性の観点から望ましいことと思います。一方、開示側からは有効な情報とそうでない情報も制度的に求められることにより開示することになってしまう可能性もあります。
自らの取組みとその進捗と成果を開示することにより、その責任を果たそうとする企業の姿勢がサステナ開示により明らかになるのではないかと思います。

人的資本の開示、にひとこと

組織は人なり、人がお互いを尊重しながら活動することで組織の社会的存在意義が産まれていくと考えます。また、組織が人の能力を引き出し、伸ばすことで組織は自ら成長することができます。
組織が「人」の視点から自身の活動を捉え、分析し、評価することで、組織としての取組みに反映することができます。

わが国でも企業に対し人的資本の開示が義務化される方向です。これは制度対応的な側面もありますが、一方で組織と人との大切なコミュニケーションの手段にもなり得ます。組織が人のどの様な能力を求め、それを伸ばし、組織の成長に繋げようとし、その結果がどうだったのか、という情報を自ら分析・評価し、人的資本の開示により関係する人に伝えることができます。組織は人なり、まさに組織を取り巻く従業員、取引先、株主、投資家、などは企業の業績に関する情報だけでは正確な評価が難しい、といわれています。企業が人的資本に関する情報を伝える活動を通じて自らの採用・育成・評価・昇格といった人に関する活動のみならず、将来における課題を特定し、それに対して取組むことにより更なる成長への好循環を創り出すことができると確信しています。
開示の実務面からISO30414に掲げられている項目が注目されていますが、これらの項目について全て対応する必要はないと思います。自らの組織として組織力の源泉を特定するヒントとしてISO30414などを利用することをお勧めします。

ガバナンスで稼げるか?

企業がガバナンスを強化することが稼ぐ力に繋がりますか、と問われたらどの様に答えるでしょうか。
ガバナンスはそこからヒット商品を生み出すことはありませんが、ヒット商品の種を拾い上げる、種を見逃さない、という役割りはあると思います。
また、ヒット商品の種を確実に育てる、ヒットした商品の収益力を維持し、伸ばす、という役割も担うことになると思います。
ガバナンスは誰のため、という問いに対し、株主?経営者?ステークホルダーの皆さん?という答えが想定されます。
ガバナンス強化による効果はどの様に評価しますか?測定しますか?という問いに対し、ROEなどの業績指標により評価することも考えられますが、果たしてそれが適当でしょうか?企業活動が円滑に機能する状態を維持している、それがガバナンスが効いている組織といえると考えます。


気候変動について財務情報で開示するのは何故?

企業の気候変動への取組みに関する情報を財務情報を提供する媒体(有価証券報告書)で開示するよう制度化を検討しているということを耳にしたことがあると思います。気候変動がもたらす将来に関する影響を企業の財務情報に反映する、ということの必要性は感じても、制度会計の枠組みに織り込むのはややハードルが高いと感じるかもしれません。財務情報は企業の経営者による将来の計画に基づく見積り要素が反映されることはご存知と思います。気候変動が企業のビジネスに大きな影響を及ぼすことが確実であれば、それを反映することになると思います。気候変動はその影響が直接的・間接的に広範であり、企業においてもその影響を看過することはできないと考えられます。その影響について財務情報に反映すべき、あるいは、その可能性が高い事象については適時に開示していくことが求められるということは理解できると思います。
会計制度がこの社会的期待に応えることができるような枠組みの提示と実務の習熟が求められると感じます。

非財務情報で企業価値を評価する?!

中長期的な視点で企業価値を評価するために非財務情報の開示が求められるといわれています。企業は自社のビジネスの持続可能性を確保するために様々な取組みをしています。市場や技術の開発・継承、従業員の確保・育成、設備の建設やその資金の確保、などビジネスに直接的な取組みもあれば、リスク管理やガバナンス強化といった企業組織の存在・運営に必要な取組みもあり、更には社会的存在として地球環境への取組みもあります。企業にとっての重要課題(マテリアリティ)としての取組みを企業価値として評価するためには公正な測定規準が必要と考えられます。財務会計では企業価値を貨幣価値で測定することで利用者の理解を容易にし、企業間の比較可能性も確保することができます。非財務情報を貨幣価値で測定する会計の手法を用いて測定することができることが期待されますが、この領域はまだまだ未開発です。

制度開示にひとこと!

上場企業は有価証券報告書(通称「有報」)の提出義務を課されています。有報は企業の財務内容を中心とした様々な経営情報を法令等に基づき開示する書類です。上場会社は企業活動の資金を広く投資家から集めていることからその資金を活かしているかを伝えることが求められます。健全な資本市場を確保するためには必要な枠組みということは誰もが理解できます。一方、制度として開示を求められる情報が果たして本来の目的に叶った内容なのか、という点については疑問を持つ点が多々あるのも事実です。社会要請ということで企業行動を制約したり、政策推進の誘導をするためと思われることもあります。特にわが国では他社の状況を参考に自社の企業活動に反映する傾向もあり、有報の本来の目的から離れていくのでは、と危惧することもあります。法令等を作る適切なプロセスの中で道筋を誤らないように導くことも忘れてはいけないことと感じます。

半期報告書の復活⁈

金融商品取引法等の一部を改正する法律案が11月20日に成立、四半期報告書が2024年4月から廃止されます。
四半期決算は東証マザーズ市場が1999年11月に開設されたのを機に始まり、金融商品取引法に基づく法定開示は2008年4月から開始されています。それ以前は年度決算の半分が経過したところで中間決算を行い、上場企業は半期報告書の提出が義務付けられていました。
変化する企業環境に応じたタイムリーな情報を提供すべく四半期決算の開示が求められたと理解しています。企業が情報開示を行うにあたっては、それ相応の手続きが必要であり、負担を伴うものでした。一方で、市場から資金調達をしている責任を果たすためには、資金提供者に情報を開示することは必要不可欠であり、四半期決算もその一環と理解しています。
四半期報告書の提出義務はなくなりましたが、四半期決算に関する決算短信の公表は継続されます。四半期決算の役割りが終わったのではなく、手続きの一部を簡素化するものであり、その効果を期待することは限定的なものと考えます。