SHIRAHA CPA Profession Office
白羽公認会計士事務所

ESGのポイント

Accounting Professionから見るESG

人類が生き続けていくためには何が必要か、この問いに対し我々は共通の課題に直面しています。この課題をESGという軸で整理し、それぞれの行動に結び付けていくことが長期的なこの課題に対し効果的であると考えます。
ESGを軸にそれぞれが考え、行動することでこの共通の課題に取り組むことが求められています。更に、人類の活動として持続可能な取り組みとするために、経済性を確保していくことも求められます。企業は健全な成長を目指し、経営理念のもと経営計画をたて、実行し、その成果を利害関係者に報告してきています。
企業活動の成果としての業績報告に深く関わってきた経験を活かすことでESG課題に関する取り組みを推進することがAccounting Profssionに求められる役割りと理解しています。
このコラムではAccounting Profssionとして理解する企業活動におけるESG課題への取り組みとその基礎となる情報と意見を整理することで社会共通のESG課題に貢献したいと考えています。

ESGーセルフチェック

ESGは人類の共通課題として認識され、それぞれが考え、取り組みを始めています。
企業も社会を構成する主要なメンバーであり、企業としてESG 課題にいかに取り組むかが問われています。
まずは、自社の現状を確認してみましょう!
6項目以上にYesならばGood、3項目以下ならご相談ください。

質問項目

Yes/No

1

ESG課題への取組みの必要性を理解している

2

経営計画にESG課題への取組みを反映している

3

統合報告書/CSR報告書を作成している

4

気候変動課題に向けた取組みを実施している

5

自社グループのCO2排出量を把握している

6

自社グループの社会的責任について理解し、実践している

7

自社グループのガバナンスに関する課題を理解し、取組みを実施している

8

資金調達においてESG要素が考慮されると考えている

9

ESGに関する取り組みは他社と比べてそれほど遅れていないと考えている

温室効果ガス(Green House Gas)とその排出量算定方法

GHGは自然起源か人為起源かを問わず、大気を構成する気体で、地球の表面、大気及び雲によって放射される赤外線スペクトルの内、特定波長の放射線を吸収及び放出するものです。(CO2だけではありません。)GHGの指標となるCO2換算排出量は地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)から求められます。GWPは所定の期間において、GHGの単位質量当たりの地球温暖化に与える影響をCO2を1.0とした相当量で記述する係数です。
  CO2換算排出量=統計データによる活動量×公表されている排出係数×GWP

GHGはScope1排出量は組織境界内の直接的な排出(液体、気体燃料などの種皮)、Scope2排出量はエネルギー起源の関節排出(他社から供給を受けた電気、熱の生成段階での排出)、Scope3排出量はその他の間接排出(サプライチェーンにおける間接的な排出や、社員の通勤、出張による排出、販売した製品の使用時における排出など)に3分類される。Scope3を15個のカテゴリに分解・体系化し、排出量の算定・報告を要求している。
わが国では温対法に基づく「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」があり、環境省と経済産業省が「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」を作成しています。排出活動ごとに排出量を算定することになりますが、基本的な算定式は「温室効果ガス排出量(tガス)=活動量×排出係数(活動量当たりの排出量)」となります。
<ひとこと>Scope3サプライチェーンにおける間接排出量の削減目標を設定し、実績を集計することのハードルをいかにクリアするかが問われています。
環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:算定時の参考資料 (env.go.jp)

<最新情報>
温対法に基づくGHG排出量の算定・報告・公表制度
報告から公表まで2年間かかっていましたが、1年未満で公表することになります。2021年度分から適用となります。(2021年度分は2022年6月又は7月に報告し、公表はが2023年には公表されます。)
また、事業所ごとの排出量は報告はしていたものの公表されていませんでしたが、公表されることになります。


<豆知識>
余談ですが、牛のゲップはGHG!
CO2の次に排出量の多いGHGはメタン(CH4)であり、牛のゲップやゴミ(廃棄物)から発生しています。

非財務数値の財務数値化

定量化された非財務情報を財務数値に置き換えて企業評価に結び付けることができるかが課題と考えています。定量情報を財務数値に換算する標準的な手法は開発されておらず、今後の実務の中で評価が定まることになると考えられます。企業評価の比較可能性(企業間比較と期間比較)を確保するためには一定の手法による評価が定着することが必要と考えます。
代表例として、多くの企業にとって気候変動課題は共通の課題であり、GHG排出量(目標と実績)は企業の価値評価にとって有用な非財務数値となります。GHG排出量に炭素価格(カーボンプライシング)を乗じる手法は財務インパクトを試算する多くの企業で採用されており、非財務数値の財務数値化の手法として定着していくと考えられます。しかし、標準的な手法は開発されておらず、今後の実務における評価に拠るところになると考えられます。

規模の大きくない企業の気候変動対応

初めて取り組むという企業はまずは可能なものから取り組みを始め、徐々に範囲と内容をブラッシュアップしていくことが求められます。企業としての取組みを開示することでCGへの対応を図っていくことになります。

規模の大きくない企業にとっては全ての項目に即時の対応は困難であり、可能なものから取り組み、段階的に開示内容を充実させる。日本商工会議所「地球温暖化対策行動宣言」の取組みを発展させ、段階的にTCFD対応をすすめることでどうか、という意見もあります。
地球温暖化行動宣言とは « 日商エネルギー・環境ナビ (jcci.or.jp)

取引先である大企業のサプライチェーン全体でのGHG排出量削減に対する取り組みの一環としてGHG排出量を開示することもある。

SDGsとどう違う???

sustainable development goals 持続可能な開発目標
2015年9月15日から開催された第70回国連総会で採択
国際社会全体が、人間活動にともない引き起こされる諸問題を喫緊の課題として認識し、協働して解決に取り組んでいくことを決意した画期的な合意
2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で、環境・社会・経済の3つの側面から捉えられる17のゴールと169のターゲットで構成されtおりています。

国連広報センターを参照ください
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは? 17の目標ごとの説明、事実と数字 | 国連広報センター (unic.or.jp)

SDGsとESGは世界の諸課題の改善・解決のための目標・考え方といことでは共通しているといえます。SDGsは国連並びに各国の政府が主体となり取り組んでいるのに対し、ESGは企業や投資家が主体となり取り組んでいるという点では異なります。
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)はESG投資とSDGsの関係について、民間企業がSDGsに取り組むことで共通価値創造(CSV)を実現し、企業価値の持続的な向上を図ることで、ESG投資を行う投資家の長期的な投資リターンの拡充につながると分析しています。
わが国では、2016年に”持続可能な開発目標(SDGs)推進本部”を内閣が設置し、”持続可能な開発目標(SDGs)実施指針”が決定されています。また、経済産業省は”SDGs経営ガイドライン”を作成して企業の経営者や投資家などへの普及を推進しています。

★ SDGs実施方針の中で8つの優先課題が示され、更に気候変動に関してCO2排出量の削減を目指して、再生可能エネルギーを利用して循環型社会(カーボンリサイクル)を推進しようとしています。

<ひとこと>
SDGsに係る企業の取組について「既存の取組にSDGsの各ゴールのラベルを貼るにとどまっている」との評価があるのも事実、と言われています。
企業が継続する事業の中でビジネスの力により社会課題を解決し、さらなる企業価値の向上に向けた努力を続けること、がゴールに向けた取組みといえるのではないかと思います。

サステナビリティ開示

サステナビリティ基準委員会(SSBJ)はサステナビリティ開示基準の公開草案を公表している。わが国特有の取扱いも含まれており、その内容は次のとおり。
①報告期間と異なる算定期間の指標を開示することを許容
②財務諸表と異なるタイミングでのサステ情報を開示することを許容
③財務諸表とは別に開示することを許容(有価証券報告書の2段階開示)
④コネクティビティを開示(財務情報との関連性を開示)
⑤初年度経過措置(リスクと機会の非開示を許容)