AUP(合意された手続)の活用
〇AUPはどのような場面で役立つの?
「会計監査は受けていないけれど、計算書類等の正確性を担保するために専門家にチェックしてもらいたい!」というようなご要望があるときにAUPは役に立ちます。
なお、業務執行サイドからのご要望はもちろん、監査役サイドからも、自身の監査業務における参考資料として利用したいというニーズもあります。
〇AUPってなに?
AUP(合意された手続)は、業務実施者となる公認会計士等が計算書類等のチェックを行い、その結果を報告書にまとめて業務依頼者(会社等)に報告するものですが、どのような手続きをするかを業務依頼者と業務実施者の間で相談しながら決められるという特徴があります。
〇AUPと会計監査の違いは?
会計監査は、会社(業務依頼者)の利害関係者のために、公認会計士等(業務実施者)が財務書類等の信頼性を保証するものです。一方、AUPは、会社のために、公認会計士等が計算書類等の正確性を担保するために両者で協議して決めた手続きを実施するものです。主な相違点は以下になります。
|
会計監査 |
AUP |
誰のために? |
主に株主や投資家 |
主に会社 |
報告書の有無 |
あり |
あり |
実施手続の内容 |
監査の基準に従って、公認会計士等が判断し決定 |
会社と公認会計士等が協議し決定 |
工数・費用 |
広範囲にわたる手続きが必要になるため、AUPと比べ工数・費用が多い |
限定的な手続きであるため、会計監査に比べて工数・費用が少ない |
〇具体的にどんな手続きを実施するの?
手続きの内容は上述のとおり、業務依頼者と業務実施者の間で任意で決めるのですが、例としては以下のようなものがあります。
手続例 |
手続内容 |
1 |
業務依頼者から提示された添付の「当座預金明細‐×年×月×日現在」の金額欄に記載されている金額を合計し、当該合計金額と「総勘定元帳」の×年×月×日現在の当座預金残高を突合し、一致しているかどうかを確かめる。 |
2 |
業務依頼者から提示された添付の「退職金計算書」に記載されているA氏に対する退職金の金額が、退職金規程で規定されている以下の計算式で計算されているか再計算により確かめる。 計算式:×××× |
3 |
×年×月×日の午後×時に本社経理部の保管する小口現金を実査した上で、「小口現金残高表‐×年×月×日現在」の金額欄に記載されている金額と業務実施者の実査結果を照合し、一致しているかどうかを確かめる。 |
4 |
業務依頼者の子会社××から「売掛金残高明細‐×年×月×日現在」を入手し、当該「売掛金残高明細‐×年×月×日現在」に記載されているNo.1~No.10 の取引先に確認を実施し、確認結果と「売掛金残高明細‐×年×月×日現在」に記載されている金額を照合し、一致しているかどうか確かめる。なお、不一致の場合は、実施結果報告書に不一致の金額を記載するとともに、経理部長に不一致の理由を質問し、回答を記載する。 |
5 |
×年×月×日から×年×月×日までの稟議書ファイルを閲覧し、経営管理部長の承認印が押されているかどうか確かめる。 |
(出典:専門業務実務指針 4400「合意された手続業務に関する実務指針」に係るQ&A ※著者一部修正)
なお、実務上は、業務実施者(公認会計士等)が過去の計算書類等の閲覧やヒアリングによる事前調査を行い実施する手続案を策定し、業務依頼者(会社)の希望により手続きを修正していくという流れで実施手続を合意していきます。
〇助言業務との併用で、より安心!
AUPは期末決算が締まった後に実施しますので、3月決算会社の場合は4月から5月の間に手続きを実施するのが一般的です。ただ、新しい会計基準の導入や今までにない取引が発生したとき等、なにかあった際に、いつでも専門家に相談できる体制があったら良いな、と思いませんか?そのようなときには助言業務を併用すると安心できると思います。
〇まとめ
「会計監査人の設置義務はないけれど、会計・財務報告の質を確保したい!だけれども、会計監査の対応は大変だし、費用も抑えたい!」というようなご要望があるときは、AUP(合意された手続)+助言業務の利用を検討してみてはどうでしょうか。